心エコーの描出上達について思うところ

こんにちは、エコープライムQです。

心エコーの描出上達について、経験談を交えて少々お話します。

 

描出の上達は簡単なことではありません。

仕事には慣れるまで時間がかかりますが、心エコーの描出には特に時間が必要です。

言い換えれば、「ローマは一日にして成らず」「千里の道も一歩から」「大器晩成」「継続は力なり」といった諺がぴったりです。

 

私自身、一人前として扱われるまでに最低でも3年かかりました。毎日心エコーを撮っても、毎日ダメだしを受ける日々でした。10年以上経験を積むと一人前扱いされるようになりましたが、最近では後輩の指導が仕事の大部分を占めるようになりました。後輩の前で自分の実力を示すプレッシャーには毎日戦っています。

 

後輩に教える立場になると、新たな気づきがあります。後輩のエコー画像を見ていると、細かな部分に注意を払いたくなります。「収縮期と拡張期、どちらも左室内膜はもっとキレイに出そう!」、「心尖部アプローチ、収縮期に心尖部が潰れている!」、「ゲイン高すぎるからもっと低くして!」と、心の中で指摘してしまいます。後輩の反応は様々で、すぐに修正する者もいれば全然修正しない者もいます。

 

エコー画像を判読する先生の気持ちがよく理解できるようになってきました。しかし、描出に苦労してやっと描出できた画像にダメ出しされると、悔しさや怒りを感じます。どちらの気持ちも理解できる中間の立場にいます。

 

どうアドバイスすべきか悩むこともありますが、描出のプロを探すのは難しいです。技師の間で優れた技術を持つ人を見つけるのは至難の業です。

 

描出の上達には、3種類のテクニックを駆使していると思います。

  1. 正しい断面を得るテクニック
  2. 明瞭な画像を得るテクニック
  3. 臨床側が必要とする画像を得るテクニック

 

これらの基本的なテクニックの上達が重要です。画像がキレイであっても、必要な情報を得られなければ意味がありません。技術や知識を総合して、有用なエコー画像を提供することが最終的な目標です。

経験的に、画像がキレイになるコツがいくつかあります。これらを共有したいと思っています。

もっと具体的な内容は、後ほどまとめて行きたいと思います。

youtube、ブログ、kindle出版、どれがいいかなと悩んでおりますがちょっと考えてみます。

学会演題出して!の連絡があったとき思うこと

こんにちは。エコプラQです。

 

よくある連絡ですが、またありました。

「一般演題足りないから出して!」の連絡です。

 

私に出すようお願いされることもありますが、施設単位でお願いされることもあります。

演題数によっては、できる企画が変わることもあるようで、開催側としては結構必死な訴えをされることもあります。

いままであったのが、

  • 特別企画のためにはあと5例必要だからみんな1演題ずつ
  • 10演題目標にしているからお願い
  • お世話になった先生からお願いされたから演題出して

のような感じです。

この業界の先輩からお願いされると断れないこともあります。

そもそもですが、演題出すのは良いことだと思います。

ものすごく勉強になるからです。

ただ気になるのは、

「演題さえ出してもらえばいい」

「演題数さえあればいい」

というようなお話も少なくないことです。

 

本来、演題を出して発表することは、本来すごく貴重な症例を体験したので、同じソノグラファー内で情報共有してお互い勉強しましょう!というのが理想だと思っています。

いままで、自分が勉強になった症例を発表して、時間と費用をかけてスライドまとめて練習して手間暇かけた割に、参加者以外に伝わらなかったり、記憶に残らなかったりする・・・

そうなってしまうと、本来の意味が薄れてしまい、私の頑張りも意味がなくなり、ちょっと悲しくなります。

せっかくなるなら印象に残して苦労を爪痕にして残したい!と思います。

 

なので、演題を出すときは、記憶に残るようインパクトを付けようと思っています。

題名や抄録はあまりインパクト残せないので、発表スライドにいろいろ工夫を仕掛けます。

例えば、いままでやってみたことはこんな感じ。

  • 発表の文言に印象に残る言葉を入れる
  • スライドのアニメーション機能で画像をめちゃくちゃ動かす
  • 裏話を色々述べる(上司とのやりとりで苦労したこととか)
  • 漫画や映画などの有名なフレーズをちょっと入れる

これまでの取り組みで、参加者から「こんな症例だったんだね!すごく記憶に残った!」という反応を貰えたこともあり、嬉しくなりました。

発表は演題数だけ求められることもありますが、演題内容を覚えてもらうために、発表者にもできることはあるのでは?と思ったので、ツラツラ述べました。

ハンズオン

久しぶりのハンズオン講師

コロナ禍の影響で、最近はほとんどがオンラインでの勉強会でしたが、久しぶりに現地でのハンズオンを行いました。

実に3年ぶりくらいでしょうか。やはり直接技術を教えるのは、医療従事者としての喜びを感じる瞬間です。

参加者からは、さまざまな要望が寄せられました。

  • 当直中のエコーがうまくできない
  • 3年目の研修医になる前に、夜勤当直のためエコーを習得したい
  • 8年ぶりに循環器を復習しなければならなくなった
  • 急患に対応できるエコーを身につけたい

そのため、救急エコーを中心に指導することにしました。

日本心エコー図学会のウェブサイトには、PoCUSやFOCUSのガイドラインがわかりやすくまとまっていますので、まずはそれについて説明しました。

  • 私のルーチンの取り方
  • 基本FoCUSで描出すべき3アプローチ5ビューの説明、取り方
  • 心窩部アプローチのコツ
  • 胸骨上窩アプローチのコツ

 

持ち時間は4時間ですが、2時間で終わってしまいました。

救急のポイントは案外少ないですね。あと何を教えたらいいか悩みましたが、通常ルーチンの描出で役立つコツを紹介しました。

  • カラードプラの基本
  • 連続波ドプラ、パルスドプラの使い分け
  • TRPGを拾うコツ
  • 拡張能の説明、取り方
  • 大動脈弁狭窄症の評価
  • 僧帽弁狭窄症の評価
  • 壁運動の評価
  • 画像を見やすくする設定

これで残り2時間を教えたら、今度は時間が足りなかったですね。結構潜在的な需要はいろいろなところにあるものだと実感しました。

終わった後の満足度はまずまずでした。久しぶりにしてはうまく教えられたかなと思いました。

業者さんからの情報

知り合いの業者さんがサポートで来られていました。休日出勤とのことですが、ちゃんと手当は出ていると聞いて安心しました。

機器の貸し出しについては勉強会のために今回準備されたそうです。勉強会によっては、機器を購入しているところもあるようです。

医療機器は薬機法のために医師や法人にのみ販売可能なので、いろいろなハンズオン勉強会でもエコー機器を持っているところは少ないそうです。

そのうち、私も勉強会の世話人とか、立ち上げとかするかもしれません。そういう時のために、今日聞いたことは覚えておくようにします。

エコーは技術次第でかなり診断の正確性が向上しますが、技術を付ける環境が乏しい社会だと感じます。

技術が上がれば、正確な診断や見逃しも減ると思いますが、施設によってやり方が異なったり、職場環境や雰囲気で習得が十分でない技師が多いようです。

また、外部のハンズオンも高額で頻度も少ないです。もっと需要があると思いますが、もし私が開催側ならもっと安価で高頻度のハンズオンを計画したいな、と思いました。

心エコー時 患者さんへの配慮について

こんにちは。EchoPrimeQです。

 

今回のテーマは心エコー検査時の配慮についてです。

 

心エコー検査では、患者さんに気を配る場面が多いです。

患者さんも緊張しており、検査者側として配慮することで、検査をスムーズにできます。

そこで今回、私が普段やっていること、気をつけていることについて、説明していきます。



 

  1. 検査前に丁寧に説明する

心エコー検査は患者にとって初めての方も多くいます。

安心感を持ってもらえるように、穏やかな感じで接するように努めています。

穏やかな感じのまま、丁寧に検査の説明をするようにしています。

 

私の場合は、以下のような説明をします。

一度に伝えると長くなるので、タイミングをずらしたり、一部省略したり、端的に説明するように意識しています。

よく使うセリフは以下のものです。

 

  • ずっと左側臥位になるので、体勢が辛いときは教えてください
  • 寒くなったら、体にかけるものを用意します
  • ゼリーが冷たいですが、これを付けないと検査できないのでご理解下さい
  • ゼリーが衣類に付かないようにしていますが、多少付着することもあるのでご理解ください
  • 時々、体制と呼吸の調整のため指示を出すので、ご協力お願いします
  • これは、放射線、磁力、電波は使っていないので、体に害はないです
  • 検査には10分かかると思います

 

 

  1. 胸部に配慮する

心エコー検査では胸部を露出する検査なので、いろいろ配慮をしています。

心電図のように短時間で終わる検査でない分、検査中どのタイミングでも配慮が必要になることもあります。

当然ですが、カーテンやパーティションを使用して検査室の外からの視線を遮り、検査中に安心してもらえるように注意しています。

経験的に、胸部を出すことへの不安、寒さに対する訴えが多いです。

対策として、胸部にタオルを掛けたり、暖房の温度を上げたりしています。

 

  1. 異性への対応

患者の性別に気を配るのは、心エコー検査では特に注意しています。

検査者は同性がいいと希望されることも多いです。

そういう場合は、同性の検査者が準備できるまでお待ち下さいと伝え、同時にお詫びもしています。

一例ですが、非常に混雑しているときは、「女性の検査者がすぐご案内できなくて申し訳ございませんが、男性検査者でよろしいでしょうか?」と断った上で案内する場合もあります。

患者さん側だけでなく、スタッフの負荷の偏りも配慮が必要な場面もあり、臨機応変に対応しています。

 

  1. 小児症例への心遣い

小児に対しては、特に心遣いが必要です。

ママ抱っこじゃないと泣く子、暗い部屋を見ただけで泣く子、じっとしていられない子、暴れ出す子、プローブやゼリーが気になって触ろうとする子、いろいろあります。

その子その子に合わせた対応が必要なので、対応は本当に様々です。

検査を完遂できないことも多く、外来の先生と相談しながら検査します。

鎮静剤を使って検査するか、今回は検査中止にするか、先生に判断を仰ぎます。

検査者としてできることは、じっとしていてくれるよう様々な作戦を練ることです。

具体的には、おもちゃやDVD・動画サイトを見てもらう、ママ抱っこしながら検査する、じっとしているうちに急いで検査する、手足を押さえてもらいながら検査する、というケースが多いです。

ただし、激しく泣き出す場合や体動が大きい場合は、心拍数が上がって十分に評価できないので、無理矢理検査するのは避けています

保護者への事前説明も大事になります。

安静な状態をとってもらうために協力をいただき、鎮静後に再検査する可能性があることを理解してもらった上で検査しております。

丁寧に説明を心がけているのが幸いしているのか、殆ど苦情なく検査できております。

 

 

  1. 検査中リラックスしてもらう

部屋は暗めで、静かな環境になるようにしています。

たまに隣の検査室の声が聞こえて影響されてしまうことがあります。

隣の検査者が「息吸って」というと、こちらの患者さんも息を吸ってしまうとか。

話がずれましたが、検査中落ち着いてもらう環境のため、寝てしまう方もいる一方、逆に会話が始まる患者さんもいます。

寝てしまう患者さんの場合は、呼吸の支持ができなくなるので、やむを得ず起こすこともあります。

会話が始まる患者さんは、たまにトークが止まらないこともありますし、トークが面白すぎて検査者が止められないこともあります。

しゃべりたくて仕方ない心不全患者さんでは、息切れなのか息継ぎなのかわからないことになります。

徐々にセルフ負荷エコーになってしまうこともあります。

そういう場合は、息を止めてもらうことを何度か繰り返します。

息止めてる間はしゃべれませんので、強制的にトーンダウンしてもらっています。

しばらくすると落ち着いてくれることが多く、私はよくやっております。

 

 

  1. 「ありがとう」「ごめんなさい」をこまめに伝える

検査前、検査中、検査後、どの場面でも患者さんの協力があると助かります

そのため、細かく感謝の言葉を伝えています

検査前は、服をめくってもらったり、左側臥位になってもらったり、何かしてもらうタイミングで言います。

検査中は、呼吸調整や体位調整をこまめにするので、調整の度に言います。

検査後は、ごめんなさいも使います。しばらく横向きになってもらったこと、ゼリーやプローブを胸部に当てていたこと、結果をすぐお伝え出来ないこと等、色々あります。

 

 

 

如何でしたでしょうか。

ある程度検査に慣れると、血行動態や病態に目が向きがちですが、検査中の患者さんに十分配慮した上での検査ですので、配慮はしすぎるに超したことはないと思っています。

今回の内容が普段のエコー検査に役立つ内容になりましたら幸いです。

心エコーで壁運動を評価するコツ

こんにちは。Echo Prime Qです。

 

今回のテーマは壁運動異常についてです。

 

まず結論から言うと、壁運動の評価は主観です。

経験や慣れが必要であり、個人差が大きく影響します。

誰かが最初に「悪い」と言えば、不思議とその箇所が悪く見えてしまうこともありますし、鶴の一声で判断が変わることもあります。

 

自分の壁運動評価を納得してもらうための方法があります。

今回、その方法を共有したいと思います。

 

心エコーで壁運動評価を評価するコツ

 

まず、客観性を持たせることが非常に重要です。

客観的な情報があれば、相手も納得しやすくなります。

初めは主観的な評価からスタートし、それに加えて客観的な情報を提供することがポイントです。

「私はここの部分が悪いと感じます。なぜなら、こういった客観的な所見があります」というアプローチが効果的です。

逆に、客観的な情報から判断することもあります。

 

具体的な方法については以下になります。

 

正常部分と比較

正常部位と低下部位を同時に記録し、同じ画像内で比較します。

正常部分と比較することで、客観性を持たせます。

【レポートへの記載例】

  • 前壁~前側壁(側壁)に低下を認めます。中隔の壁運動と比べて壁厚増大の程度が弱いです。
  • 心尖部の低下が疑われます。心基部と比較して壁厚増大の程度が乏しいです。

             

複数断面で判断

傍胸骨断面、心尖部断面の両方で確認します。

場合によっては心窩部断面も活用します。

どの断面でも悪ければ低下と判断します。

もし断面によって印象が異なるようでしたら再確認します。

(あとから見直すとか、角度をずらして観察するとか・・・)

 

注意点もあります。

弱く見えやすい部分もあることです。

私が気をつけているのは以下の領域です。

  1. 下壁中隔基部、下壁基部:心尖部断面では内膜のラインがわからなくなったり消えたりします。必ず傍胸骨断面でも確認します。
  2. 中隔中部:S字状中隔では、中隔中部が薄いことが多いです。一見非薄化しているように見えます。中隔基部が厚い分、中部の薄さが際立ちますので注意しています。収縮期に厚くなっているかを多角的に観察しています。
  3. 前壁:肋間からのアーチファクトが被りやすく、壁運動を見落としやすいように感じます。
  4. 後壁:腱索やアーチファクトで内膜を見失うことがあります。


【レポートへの記載例】

  • 心尖部断面では下壁基部の低下が疑われますが、傍胸骨断面では正常です。心尖部断面ではアーチファクトの影響で内膜が見えにくくなっていたと考えます。
  • 傍胸骨断面が描出困難です。心窩部断面から描出できたので、こちらの断面で判断しました。

 

心筋の性状

心筋は障害を受けると、輝度が上昇し、壁厚も薄くなります

心筋が壊死し線維組織に置き換わり瘢痕化するためです。

そのため、輝度や壁厚の変化は、壁運動低下を疑う重要な所見になります。

 

ただし、輝度が高くて壁厚が薄めでも、壁運動自体は正常なこともあります。

そういう場合は、「壁運動は正常の範疇ですが、内膜輝度が高く、壁厚も薄めなので、低下している可能性が考えられます。」と書いています。

 

【レポートへの記載例】

  • 前壁中隔から前壁にかけて低下の可能性があります。内膜輝度が高く、壁厚も他の部分より薄いです。

 

前回との比較

前回画像が残っていれば、見比べます。

前回と同じ断面で比較して弱いと思えたら、「低下あり」と判断します。

その際は、同じ断面どうしを見比べると、より説得力が上げられると思います。

【レポートへの記載例】

  • 前壁中隔の低下を疑います。前回画像で短軸断面どうしを比較したところ、前回より動きが悪く、内膜輝度の亢進を認めます。

 

スペックルラッキングの活用

スペックルラッキングを用いたストレイン評価も有用です。

ストレイン評価には3種類あります(長軸方向、短軸方向、円周方向)。

 

その中でも、特に長軸方向のストレイン低下は壁運動低下よりも早く現れると考えられています。

つまり、「壁運動低下がある」という所見があれば、「長軸方向ストレイン低下もある」という関連性が期待されます。

 

ただし、注意点も存在しますので、それについても述べます。

 

また、駆出後収縮運動(post-systolic shortening:PSS)という現象も注目されています。

これは収縮期が終わって大動脈弁が閉じた後に最も収縮が生じるものであり、虚血を受けた部分において出現することがあります。

虚血が改善してもPSSが確認されることから、虚血の有無や改善の程度を示す指標として有用とされています。

一部の報告では、PSSがGLSよりも予後の予測において優れているとされています。

 

JACC Cardiovasc Imaging . 2009 Nov;2(11):1253-61.

Insights Imaging . 2022 Mar 2;13(1):35.


【レポートへの記載例】
・前壁および前側壁(側壁)の壁運動低下を疑います。スペックルラッキングストレイン値も低下しています。

PSSを認めるため、この領域の低下が疑われます。

エコー以外の情報活用

病歴、症状、心電図を見ておきます。

壁運動異常の可能性が高い症例を把握しておくためです。

リスク因子がある症例(高血圧、高脂血症、糖尿病)、最近胸が締め付けられるような胸痛がある症例、では特に注意して観察します。

心電図では、R波増高不良、異常Q波、ST-T異常など、何らかの所見があるときは怪しいと思って検査します。

むしろ、そのような心電図所見がある場合、エコーで原因を求められることもあります。


【レポートへの記載例】

  • 前壁中隔や心尖部の低下を疑います。心電図ではV1-V3載せてR波増高不良を認めています。
  • 下壁が全体的に低下しています。心電図上、Ⅱ、Ⅲ、aVf誘導で異常Q波もあります。

注意すべきこと

描出不良例

見えないと評価できないので、無理に判断しない方が良いことがあります。

不明瞭であれば、内膜の位置の同定を見誤るかもしれません。

「描出不良のため多断面での評価が難しい」と記載し、明瞭に見えた断面のみで評価するのも大事です。

アーチファクト、周辺組織の影響

様々なアーチファクトが左室壁内膜に干渉してきます。

大きく分けると2種類です。

  • アーチファクトが重なってくるパターン
  • 超音波が入らず内膜が見えなくなるパターン

(2つめは減衰の影響もあるので厳密にいうと違うかもしれませんが...)

心尖部の心筋梗塞症例では、瘢痕化の高輝度部分から多重反射が生じ、壁と内膜の境界が分からなくなることもあります。

多重反射が血栓のように見えることも少なくありません。

アーチファクトや周辺組織の同定には、描出位置をずらす、多断面で観察する、等が有効です。

ストレイン値低下を用いた評価

さきほど、「壁運動低下がある」なら、「長軸方向ストレイン低下もある」と説明しましたが、ストレイン低下の方が先に低下が生じるため、という理由です。

ですが、実際はそうならないことも経験します。

ストレイン評価は、画質やトレース法に依存する問題があります。

不鮮明な画像、関心領域がおかしいストレイン評価では、当然値もおかしくなります。

また、ストレインの結果は検証が難しいです。

本当に悪いのか、計測の問題なのか、検証する方法がありません(MRIすればできるのかもしれませんが)。

そういうことで、使い方としては、壁運動異常とストレイン低下が両方あったら、より疑わしいと判断するのがベターかなと思います。

PSSを使ってもいいと思います。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

壁運動はルーチンでやりますが、とても難しいです。

私も未だに他の検査者と一致しないこと、カテーテルやCTのと合わないことを経験します。

ですが、それは心エコーの限界として仕方ない部分もあります。

大事なことは、心エコーで壁運動を判断する場合は客観的な情報も入れることであり、信頼が得られていくと思っています。

上記の方法以外にも、良い方法が見つかったらアップデートします。

最後までご覧いただきありがとうございました。

 

 

 

 

心エコー検査 ~検査の流れ~

こんにちは、エコープライムQです。

心エコー専門の医療従事者です。

 

患者さんから、心エコー検査って何するんだろう?と聞かれます。

また、医療従事者の中でも、エコーに携わらない職種であれば何をするかわからないです。

同職種でも他施設との違いが気になることがあります。

 

今回、私の施設で実際どんな流れで検査しているか記載したいと思います。


私の職場のやり方が中心です。

他の御施設との違いもあると思うので、ぜひご覧ください。

 

心エコーのイメージ図



心エコー検査の概要


検査時間

おおよそ15分前後で終わります。

 

病院の規模にも依ります。

クリニックでは5~15分ぐらいです。

大きい病院では30~60分ぐらいなることもあります。

大病院では難しい症例が多いため、時間がかかる傾向があります。

 

検査者

基本的に数人で回し、担当を決めずに検査することが多いです。

経験年数はバラバラですが、経験が浅い検査者にはベテラン検査者がサポートする体制を取っているところが多いです。

技術の個人差はかなり大きいのがエコーの問題点でもあります。


装置・物品

検査中に使用するものは以下の通りです。

  1. エコー機器本体:大きく2種類あります。据え置きタイプとポータブルタイプ。据え置きタイプの方が多機能で画質も良いですが、大きく重いです。ポータブルは軽くて動かしやすいですが、機能や操作性に制限があります。
  2. プローブ:心臓ではセクタプローブを使います。周波数は2~5MHz程度、血管と比べて深く見えにくい位置を観察するため、周波数は低めになっています。
  3. エコー専用検査台:抱え込みタイプの検査台では、左脇部分のみ沈み込むようになっている検査台があります。金額はかかりますが、描出能が良くなります。
  4. エコーゼリー:これがないと画像が出ません。ちょっと冷たいのでゼリーを温める備品を使うこともあります。
  5. タオル:衣類にゼリーが付かないようにします。検査後ゼリーを拭き取るのにも使います。
  6. カゴ:患者さんの荷物を入れるカゴを用意しておきます。

実際の流れ

では、実際の流れを説明します。

  1. 検査室へご案内:患者さんを検査室に案内します。検査室はエコー用に暗くしておきますが、手元や足元が見えるぐらいの明るさは確保しておきます。
  2. 本人確認:氏名、生年月日を言ってもらいます。患者IDがついたリストバンドでも確認します。
  3. 心電図装着:四肢装着用クリップを付けます。手と足に装着しますが、心電図波形が分かり難いときは、手と手に付けることもあります。クリップではなく接着シールを使うこともあります。
  4. 衣類まくり上げ:衣類を鎖骨の辺りまでまくり上げます。出来るだけ上の方までまくった方が検査の時見えやすくなることもあります。
  5. エコー開始:胸部に専用ゼリーを付けて画像を描出します。抱え込み式では、ほぼ左側臥位で検査することが多いです。
  6. 検査終了:ゼリーを拭き取り、衣類を整えます。診察や会計があることを伝えて、待合室へご案内します。
  7. レポート作成:所見を書く部屋に戻ってレポートを記載します。

 

検査の際の工夫

検査をスムーズに行うための工夫を、いくつかご紹介します。

  1. 検査者の性別できるだけ同姓技師での検査をするようにしています。女性の患者さんの検査では女性検査者が担当する等、気を配ります。
  2. 検査時に肌を隠す:どうしても胸やお腹を露出しないとできない検査です。恥ずかしいことや、寒いという訴えは割と多く、注意するようにしています。できるだけ露出を避けるため、最低限必要な部分以外はタオルで隠したり、部屋の温度を上げるように気をつけています。
  3. 搬入方法を確認しておく:患者さんの状態によっては、車椅子やベッドで来られ
    ることもあります。酸素や輸液ポンプ、輸液シリンジ、モニタを付けてくることもあり、検査するまでに手間取ることがあります。搬入方法を事前に把握し、酸素がある部屋や入口に近い部屋を開けておくような対応を取り、患者さんの状態に合わせた検査室の確保に努めています。
  4. 小児科専用の道具を用意しておく:小さい子のエコーでは、嫌がって検査できないことがあります。1~3歳の子は暗い部屋を怖がらないように、DVD、人形、おもちゃを用意しておくと良いです。DVDでアンパンマンを見ながら検査することで、最後までおとなしく検査させてくれたこともあります。


問題点&改善点

当検査室で問題になっていることがいくつかあります。

  1. 検査者の技量の差があること
  2. 検査時間が長くなること
  3. 待ち時間が長くなること
  4. 検査件数が多すぎること

人の手で検査するため、どうしてもこれらの問題点が生じます。

おそらくどの施設でも共通の問題点になっていることと思われます。

 

まとめ

今回は、実際の検査の流れ、工夫などを取り上げました。

この中で役立つ情報があったら参考にしてください。

お役に立ちそうであれば嬉しいです。

 

 

 

 

初投稿:循環器エコー専門 医療従事者のブログ

はじめまして。

エコープライムQと申します。

循環器エコー専門の医療従事者です。

 

ブログ初めてなので、とまどいながら書いています。

うまく書けないと思いますが、どうぞ宜しくお願いします。

最初の記事は、自己紹介的な内容を書きます。

 

EchoPrimeQについて

 



Echo⇒エコー、心エコーのことをEchocardiographyといいます。

Prime⇒価値、という意味です。

Q⇒私に関わる数字9→Qにしたものです。

この3つを組み合わせて、EchoPrimeQとしました。

つまり、

私Qが培ったエコー検査の技術を価値にしたい

と思ってこの名前にしました。

 

超ストレスいっぱいな大学病院で修行(エコー専門)

私は元々超音波検査は得意でありませんでした。

というより、やる気もありませんでした。

ですが、転職した病院がエコー専門でした。

すぐやめるつもりでしたが、仕事でやっているうちにのめり込みました。

 

なんでのめり込んだのかよくわかりません。

でも、原因は「習得が難しい検査」だからだと思います。

反骨心でのめり込んだのもあります。

 

入職直後から、意地悪な先輩が教育係でした。

離職者も多い職場で、5年ぐらいしごかれ鍛えられました。

 

今の環境なら、○○ハラスメントを受けていると認定されていると思います。

「他人の可能性を潰すんじゃないよ😠」

と思いつつ、イライラしながら仕事を続けました。

昔はハラスメント意識が今ほどありませんでしたので、耐えるしかなかったです

でも、10年ぐらい前ならどこの職場も同じようなものだったかもしれません。

 

いつでも辞めてやる!

と思いながら仕事しましたが、

もう一年だけ、もう一年だけ、

とやっているうちに10年以上働いていました。

 

10年も続けると、さすがに技術も知識も付きます。

いつの間にか、先輩から何も言われなくなりました

先生方からも頼ってきてくれるようになったと実感しています。

 

継続は力なり

 

って好きな言葉です。

地味ですが大事です。

 

 

エコーって何?

これからエコーを始める方へちょっとした説明です。

 

エコーとは、超音波です。

人の耳に聞こえないぐらい高い音を使います。

反射した音波を利用して、心臓の形、動き、血液の流れを調べます。

 

人間の可聴域の周波数:20~20,000Hz

エコー検査で使う周波数:2~5MHz、つまり2,000,000~5,000,000Hz

要するに、2百万~5百万Hzの音波を使います。

 

メガとか●百万とか、仰々しいですが体に害はないんです。

放射線、磁力、電波は使いません。痛くもありません。

音波です。聞こえない音ですので。

 

体内に流れる音波は1530m/sのスピードで体内を巡ります。

1秒で1530mです。一瞬です

 

この一瞬の音波を1秒にだいたい50回セット発射します。

その跳ね返ってきた音波を受信し、心臓の形や動きを画像にして調べる検査です。

 

あまり詳しく書くとつまらないのでこの辺で。

そのうちわかりやすくまとめようと思います。

 

まとめ

今回は、簡単な自己紹介でした。

そのうち、自作イラストやエコーのコツ等混ぜて説明します。

どうぞよろしくお願いします。